第7話
通常業務を終えて今は四時十分。今から向かうところ。面接っていくつになっても緊張するな。面接経験がほぼ無いのだから普通か。ただ、年が年だけに元気よくで印象を良くできるわけではない。難しいな。四時四十分にビルに着いた。少し離れたところで五分待つか。清潔感あるビルに人。くたびれた感がある俺に場違い感がこみ上げる。深呼吸だ。さあ行くか。受付で名前を告げて先方の笹本さんとアポイントメントを取ってることを告げた。ロビーでしばし待つ。ご案内致しますと受付嬢に先導され部屋の前に着く。深呼吸する。失礼しますと開かれたドアへ向かう。
「失礼します。初めまして。鈴木の紹介で伺いました。佐藤です。宜しくお願い致します」
「初めまして。笹本です。まずは座って下さい。面接と固くならずにお話しましょう」
「ありがとうございます。失礼します」
「鈴木君とは友達でね。無理言って紹介してもらったんだ。聞いた話では淡々と仕事をこなしているが、とても丁寧な仕事ぶりだと評価していたよ」
「いえいえ。良い評価を頂けるようなことはしてません。恐れ多いです」
「謙虚だとも言っていたね」
「私としては事実を申し上げてるだけですので」
「実は新規開店に伴って従業員が不足してね。営業的ではなくて、人をまとめる力のある人が必要なんだ」
「私は準社員です。そのようなポストに就いた事もありません。」
「もちろん知っているよ。強引な指導力の人が欲しいわけではないんだ。皆から相談を受けるような人が欲しいんだよ。その点主張も強くないし穏やかな性格に見えるところが評価できる。バイトリーダーになったくらいの気持ちで始めてみないか」
まとめ役ということは調整力が必要だ。カリスマ性の欠片もないモブおっさんの俺には荷が重い。
「できないと思っているだろう。結果できなくてもいいんだ。私が見誤ったというだけの話だからね。でも大事なのは君の評価は君がするんじゃないんだ。周りが評価するんだよ。これは間違ってはいけない」
「ありがとうございます。突然の大任の話に正直戸惑ってます。お返事は少しお時間頂けますでしょうか」
「今回は一般募集をかけてない話だ。少しなら待てる。その慎重さも評価できる。だが待って君がこの仕事を受け入れる可能性は低いと思う。これから先の仕事人生では最後のチャンスかもしれないよ。びくついてる、その足を一歩私の方へ踏み出してごらん。私は喜んで迎え入れるよ」
「どうして、初対面でそこまでの思いを向けて頂いてるのでしょうか」
「鈴木君は適当なことは言わない。他の人にもね。私は彼を信用してるんだ。その紹介で出会った君は信用に値する人物だということ。それでは答えになってないかな」
「いえ、十分すぎるお答えを頂きました。お受けさせて戴きます。宜しくお願い致します」
「ありがとう。後のことは鈴木君と調整してほしい。宜しくね」
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