第83話

「……ナオくん……また熱上がりそう」



いつものナオくんとのギャップに耐え切れずにそう漏らすと、



「これだけ食べてくれたら後は寝てていいから」



自分のせいだとは露ほども気付いていないナオくんが、慌てて私の口にスープを運ぶ。



「食べないと治らないぞ」



――そもそもナオくんあなたのせいなのですが。



そう言えたら少しはスッキリするのかもしれないけど。



でも、一生懸命に看病してくれているナオくんを見ていると、まぁいっか……と思えてしまうのも事実で。



ナオくんは適温に冷ましたスープを私の口にせっせと運びながら、また真剣な目で私を真っ直ぐに見つめる。



「ゆづが治ったら……ゆづのこと、もう遠慮なく口説くから」



「へ」



「めちゃめちゃに甘やかして、俺しか見られないようにする」



「……ナオくんにそんなことされたら、溶けて消えちゃうかも」



「それは嫌だな。そうならないように頑張って耐えてくれよ」



……何を無茶なことを。



「でないと……ゆづへの気持ちを我慢することになったら俺……多分耐えられないから」



空になったスープマグをベッド横の台に置いたナオくんは、



「じゃあ、ゆづ。ゆっくりおやすみ」



額、右頬、左頬の順番で、ゆっくりと唇を落としてきた。

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