第79話

それを聞いたナオくんは、ベッドの上に置いた両手でぎゅっと拳を握り締める。



「……ゆづのこと、本当に好きなんだ」



その声は一昨日、私を抱きながら囁かれたものとは違って、少しだけ震えているような気がした。



「もしゆづが俺のことをまだ好きでいてくれてるなら……俺の彼女になって欲しい」



「……!」



驚きすぎて、いろんな感情がごちゃ混ぜになって、言葉が出てこない。



「……俺みたいなクズなんかもう好きじゃないって言うなら……またゆづに好きになってもらえるように頑張るから」



「……舞ちゃんのことは……?」



やっと出てきた言葉がそれだった。



なんて可愛げがないのだろう、と自分でも嫌になる。



「今はもう、ゆづのことしか考えられない」



真っ直ぐに私を見てくれるナオくんを、信じたいという気持ちは勿論ある。



でも……



「ナオくんの“女友達”さんたちは……?」



流石に、を平気でする相手が沢山いる人と付き合える程、私は大人ではない。



これから先も、ナオくんのことを割り切った目で見られることなんて、多分一生ないと思う。



「信じてくれないかもしれないけど……ゆづを俺の部屋に泊めたあの日から、女友達あいつらとは1回も会ってない」



「え……」



「会うのを断るための連絡は毎日してたけど……でも、それ以外は本当に何もしてない」

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