第71話

「結月ちゃんの気持ちって……あれは誰がどう見ても間宮のこと大好きだろ」



シェフは呆れたように言うけど、



「……もう嫌われたかもしれないです」



自分で初めて口に出してみて、



――ズキッ……!



想像以上に胸が苦しくなった。



「まぁ……あれだけ女遊びが酷けりゃなぁ……」



「……」



シェフに“女友達”の話をしたことはなかったけど、やっぱりバレていたのか。



まぁ……“女友達”の中には、この店の客で逆ナンしてきたヤツも何人かいたし、気付いて当然か。



「先輩、今もセフレっていっぱいいるんですか?」



そんな質問を、普通の声量でストレートに訊ねてきた武村に、



「おい、レストランの厨房で下品な言葉使うなよ」



俺は鋭い眼差しを向けた。



よそ見をした隙にピザがいい焼き加減になってしまい、俺は慌てて窯からピザを取り出す。



それを皿に盛り付ける俺を見ながら、



「で、どうなんすか?」



武村はしつこく訊ねる。



「……もう随分と前からいねぇよ、そんなの」



俺は観念したように、そんな台詞を溜息と共に吐き捨てた。

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