第60話

波間なみま 乙矢さんというその彼とのメッセージは、1日のやり取りは数通だけだけど、毎日途絶えることなく続いていた。



社会人で忙しいはずなのに、昼休憩とか帰宅してからとか、空いた時間にちょこちょこ返信してくれる、マメな人だった。



だからなのか、ナオくんに会えなくて寂しいと塞ぎ込む時間がぐっと減った気がする。



私がナオくんに会いに行かなくなってから今日まで、ナオくんから連絡が来たことは一度もなかった。



……あんなキスをしてきたクセに、やっぱりナオくんにとって私なんてその程度の存在だったんだ。



そう思うと、



(乙矢さんって、凄くいい人そうだな……)



学校は楽しい? とか、その日授業で作ったものの写真を送ると、上手に出来たね、食べたい、とか気の利いた言葉をかけてくれる。



(会ってみたい、かも)



どんな人なのか、この目で見てみたいと思ってしまった。



そして、



『結月ちゃんに会ってみたくなっちゃったな』



乙矢さんからのそんなメッセージに、ほんの少しだけ……



――キュンとしてしまった。

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