第57話

梨乃ちゃんは恋多き女で、コロコロ彼氏が変わるとは思っていたけど、まさかマッチングアプリまで利用していたとは。



「結月もしてみれば?」



「私はいいよ……別に彼氏なんて」



私は彼氏が欲しいわけではない。



ナオくんのことが好きなだけだから。



「付き合わなくても、友達つくるだけでも楽しいよ? 気分転換にもなるし」



「……」



「そんな暗い顔も、少しはマシになるかも」



「……」



「スマホ貸して。登録してあげる」



半ば無理矢理にアプリのダウンロードと登録をされて、



「ほら、簡単。もう出来た」



梨乃ちゃんはかなり意味ありげにニヤリと笑った。



勝手に顔写真を載せられたら困ると思って、慌ててアプリのプロフィールを確認する。



そこに載せられていた写真は、この間私が学校で作った苺のホールケーキの写真だった。



プロフィールには、“一流パティシエを目指して勉強中です”と書かれていて。



「……こんなのでいいの?」



疑わしげに梨乃ちゃんをちらりと見ると、



「とりあえずはね。結月がガチで彼氏欲しくなったら、もっとウケそうなプロフに変えな」



梨乃ちゃんはにこにこと笑うだけ。



「はぁ……」



よく分からないけど、こうして私のマッチングアプリデビューは勝手に幕を上げられた。

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