第53話

「ん? じゃあ、一体あなた、直人の何なの?」



美女が、また鋭く私を見据える。



「幼なじみ、です」



びくびくとしながら答えると、



「あ! じゃあさぁ! なんで直人がキスを嫌がるのか、理由知ってたりする!?」



美女はチャンスとばかりに目を輝かせた。



「えっ……」



私はいろんな意味で戸惑った。



けれど、それを違う意味に捉えたらしい美女は、



「……あっ、そっかぁ。直人に抱かれたことないんだものね」



ふふふ、と勝ち誇ったように微笑む。



「私ね、直人とは所謂いわゆるセフレなんだけど」



うん、そうだと思ってた。



「彼と関係を続けるためには、絶対にキスしちゃいけないってルールがあって」



うん、知ってる。



だからナオくんからのキスを拒めなかった私は、ナオくんの“女友達”にしてもらえなかったんだけど。



「直人から関係を切られた子に聞いたんだけど、直人の隙をついてキスしようとしただけで物凄く怒られたらしくて、それっきりって」



「……」



……私の時は、ナオくんの方から普通にキスを迫ってきましたが。



「平気で抱くクセにキスはダメって、変よねぇ? 」



「……ね。変ですね」



ナオくんがどういうつもりなのかなんて元から分からなかったけど、もう余計にわけが分からない。



ナオくんを好きでいることに、正直疲れてきてしまったかもしれない。

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