第52話
デコルテの大きく開いた襟元から豊満すぎる胸の谷間が見えていて、それが腕で強調される。
美女の様子を見ていて、分かった。
この人――ナオくんの“女友達”だ、と。
「い、いいえ」
私が慌てて首を横に振ると、美女は今度は不思議そうな顔をする。
「……
全く何もなかったわけではないけれど、
「……はい」
それは今言うべきではないと判断した。
背中を、嫌な汗が伝う。
ついこの間、テレビの天気予報で梅雨入り宣言を聞いた気がするけれど、ここ数日は曇ってばかりで雨は全然降っていない。
分厚く重苦しい雲が空を覆い尽くしているせいか、湿度が嫌に高い気がする。
じめじめと体にまとわりついてくる空気と、自分の中の気持ちがとても似ているような気さえした。
「ふーん……」
美女が、値踏みでもするように私をジロジロと見てくる。
「あなた、今いくつなの?」
「じゅ、19歳になったばっかりです」
「まだ10代なの!? コドモじゃない!」
「……」
別に、実年齢を答えて驚かれることなんてよくあるし慣れてるけど。
まさか、19歳にもなってコドモ呼ばわりをされるとは思わなかった。
「ふーん、そっかぁ。だから直人のヤツも手を出さないのね」
何故か急に上機嫌になる美女に、私はただただ困惑するしかなくて。
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