第54話

元気のなくなった私の様子に気付かない……というかそもそも興味を持っていない美女が、



「……セフレとは別に、キスフレとかもいるのかしら……?」



ふと独り言のようにそんなことを呟く。



その“キスフレ”という言葉に、



「!」



私は慌てて顔を上げ、過剰に反応してしまった。



その私の反応を肯定と受け取った美女は、



「あ。やっぱり、そういう女の子がいるのね。彼の幼なじみなんだし、見たことある?」



再度、私の顔を覗き込んできた。



「え、あ……」



言葉に詰まる私に、



「やっぱりね! それなら納得したわ」



美女はうんうんと満足そうに頷く。



……私って、ナオくんにとってキスフレだったんだ。



そんなことに今更ながらに気が付いて、もう目の前の美女の言葉がまともに頭に入ってこない。



その後、美女からいくつか質問をされて答えたような気はするけど、私はその内容をほとんど覚えてはいなかった。



ただ、



“キスフレ”



という言葉だけが私の胸に深く突き刺さった。

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