第49話

私に覆い被さったままのナオくんは、



「ゆづ……」



甘く切ない声で私を呼びながら、また唇を近付けてくる。



拒絶しなければならないと頭では分かっているのに、



「……」



私は思わずぎゅっときつく目を閉じた。



その直後、優しく触れ合う柔らかな感触に、



「……っ」



私の体が緊張でびくっと強ばる。



そんな私の唇の隙間から、熱くて柔らかい何かがぬるりと侵入してきた。



「……!?」



何が起きているのか分からずにパニックになる私の舌を、その何かが絡め取ろうとする。



「……あ……んんっ……」



呼吸のし方すらも分からなくなって、あまりの息苦しさに、私は思わずナオくんのスウェットの胸元をぎゅっと強く掴んだ。



「……ゆづ?」



私の反応に気付いたナオくんが、ようやく私から唇を離した。



「はぁ……はぁ……」



目尻に涙を滲ませた私は、久しぶりに吸えた酸素を慌てて肺に取り込んだ。



心臓が、口から飛び出そうなくらいにドキドキと大きく波打っている。



そんな私の左頬を右手の親指でそっと撫でたナオくんは、相変わらず私に覆い被さった姿勢のまま、



「可愛い……」



幸せそうに微笑んだ。

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