第48話

でも……



ナオくんは誰とも付き合わないって言ってたのに。



セフレはいっぱいいても、私のことは絶対に抱かないって言ったのに。



それなのに、キスをしようとするのはどうしてなの……?



「ナオくんにとって、私って何?」



そう訊ねずにはいられなかった。



「……俺の大事な幼なじみ」



ほんの少しだけ間が空いたのが気になるけれど、それがナオくんの答えだというのなら、



「ただの幼なじみなのにキスするなんて、変だよ」



私の答えはこうだ。



「……」



ナオくんはしばらく黙り込んだ後、



「そうだよな……ごめん。でも、ゆづとはなんでかすげーキスしたくなる」



喜んでいいのか悪いのか、そんな最低な台詞を吐いてきた。



最低なクズ男だとは思う。



でも、ずっと好きだった人にこんな風に言われては、



「……」



突き放す言葉も出てこない。



「ゆづ……キスしたい」



初めて聞くナオくんの苦しそうな声に、私は恐る恐るナオくんの顔を見上げた。



「ゆづ」



私を真っ直ぐに見つめる眼差しは、まるで私のことを好きでいてくれているように見える。



好きな人にこんな風に見つめられて、それでも彼を突き放せるような勇気を――



恋愛経験のない私は、持ち合わせてはいなかった。

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