第43話

職場の2年後輩の武村たけむらにまで、



「間宮先輩、最近どうしたんすか!?」



と驚かれた程で。



事情は何も説明しなかったけど、ゆづの合コン当日、俺は遅番の予定だったのを、早番の武村と勤務時間を交代してもらった。



勿論タダではなく、今度メシを奢るという約束で。



ほんの少しだけ、ゆづの様子を見てみたかっただけだった。



皆で楽しくわいわいと食事をしているだけなら、割り込んだりせずに黙って帰るつもりだった。



でも、俺が合コン会場であるお好み焼き屋を覗いた時には、既にゆづは男と2人で抜けた後で。



それが、何故か物凄く嫌だと感じた。



もし、ゆづが他の男に触れられたらと思うと――それだけで、胸がぎゅっと締め付けられた。



だから、今こうして俺の目の前ですやすやと眠っているゆづを見ていると――



上手く言えないけど、胸の奥が温かくなっている気がする。



「ゆづ……」



このままこんな寝心地の悪い所でゆづを寝かせるつもりはない。



仕方がないのでこの間と同様に、ゆづをお姫様抱っこして寝室に運ぶ。



ゆづをベッドに優しく寝かせて布団をかけてから、俺はソファーで寝るためにベッドから離れようとして――離れられなかった。



「?」



服を引っ張られる感覚がして、慌てて見下ろすと、ゆづの右手が俺の服の裾をしっかりと掴んでいた。

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