第41話

「ゆづ……」



ゆづをベッドに運ぶには、ゆづの体に触れなければならない。



一応断りを入れたくて、控えめにゆづの名前を呼んだ。



「……ん……ナオ、くん……」



一瞬、起きてくれたのかと思ったが、



「……す、き……」



そんな一言を漏らして、また気持ち良さそうな寝息を立て始めた。



ゆづの気持ちは、この間聞いたので知ってはいる。



でも、



「……っ」



こんな風に言われてしまうと、理性が飛びそうになる。



相手は俺のことが好きなわけだし、少しくらいキスをしてもいいのではないかという気さえしてくる。



可愛い寝顔を見せているゆづにそっと顔を近付けて、唇を寄せる。



互いの唇が触れ合う直前、



「……」



突然、とてつもない罪悪感にさいなまれて、俺はぴたりと動きを止めた。



「……はぁ」



何をやっているんだろうと我に返り、ゆづからそっと距離を置く。



どんなにゆづが望んでくれたとしても、俺にはゆづを“女友達”にする気なんて微塵もない。



だから――『“女友達”にするための条件』を伝えた後でゆづの唇を奪ったのは、勿論わざとだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る