第37話

「おぉぉ、男前な飲みっぷりだな」



ニヤニヤ顔をやめて感心したような声を出すナオくんの隣で、



「うげっ! 何これ、にっがーい!」



私は思い切り顔を歪めた。



「こういうのってフルーツ味とかないの!?」



「あるけど、それは効能重視のやつ」



ナオくんはまたニヤニヤと笑いながら、テーブルに置いていた水のグラスを私に差し出す。



私は手にしていた瓶をテーブルに置いてからそれを受け取り、ごくごくと水を一気飲みして、



「まだ苦い!」



泣きそうな声で訴えた。



「あんなの、よく一気に飲んだな」



ナオくんが、偉いぞ、と言って頭を撫でてくれて、



「……」



たったそれだけのことで、私の口の中の苦味は全て消えたような気がした。



「……ゆづ?」



突然静かになった私を不審に思ったナオくんが、私の顔を覗き込む。



「ナオくんのなでなでが嬉しくて、苦いの気にならなくなった」



私がえへへと照れ笑いしながら言うと、



「……っ」



何故かナオくんは凄い勢いで私から顔を背けた。



「ナオくん?」



何か変なこと言ったかなと振り返ってみるけれど、思い当たる節がない。



「お前……まだ酔ってるだろ」



ナオくんは顔を背けたまま、そんなことを言ってきた。

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