第35話
「もしかして……私のせいで、また誰かとの約束ドタキャンしたの?」
ナオくんが仕事終わりの時間をどう過ごしているのかなんて知らないけれど。
でもきっと、私が邪魔をしていいわけがない。
「……ただの“女友達”だから大丈夫。
そんなナオくんの何気ない一言に、胸がぎゅっと締め付けられて苦しくなる。
ナオくんにそう思われていると知れてとても嬉しい反面、もし私がその“女友達”になったとしたら――
もう、私のことを大事だなんて思ってくれなくなるのかな。
「……」
ナオくんの顔を見つめたまま動かなくなった私に、彼はまた困ったような笑顔を見せる。
「ゆづのことがなくても、元々断るつもりだったから」
言いながら、ナオくんが私を手招きした。
私がナオくんの隣にストンと腰を下ろすと、彼の手が自然と私の頭を撫でる。
「最近ずっと、誰の誘いでも断ってるんだ」
「え」
彼の“女友達”になりたいと思っている私にとって、それは想定外の事態だ。
「何か……そういうことする気になれなくて」
俺ももう歳かなぁ……と言って寂しそうに笑う彼に、
「……」
さっきの“我慢”の意味を訊ねることは出来なかった。
もしかすると私にその質問をさせないための、彼なりの防御壁なのかもしれない。
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