第34話

“我慢出来なくなる”って……何を?



まさかとは思うけど……



やっぱりまさか、そんなことあるはずがない。



ナオくんが、私相手に欲情するなんて。



でも、もしナオくんが求めてくれるのなら――



彼の恋人になれないのなら、せめて彼の“女友達”として傍にいたい。



相手がナオくんなら、私はセフレでも別に後悔なんてしない。



そんな決意を固めて、リビングへと続く扉を開ける。



「あの、ナオく――」



呼びかけて、止まった。



「……」



ソファーに腰かけているナオくんが、とても険しい表情をしてスマホと睨めっこをしていたから。



誰かとメッセージのやり取りをしているらしく、小さな通知音が鳴る度に、ナオくんの指が文字を打つ操作をする。



一通りやり取りし終えたのか、



「はぁ……」



疲れたように大きな溜息をつくと、スマホをテーブルの上に置いた。



その時になってようやく、



「あ、ゆづ。動いて平気?」



ナオくんが私の存在に気付いてくれた。



「今日はもう遅いし、服も乾いてないから泊まっていきな」



そう言ってナオくんは優しい笑みを向けてくれるけれど……

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