第23話

ナオくんの部屋を飛び出した私は、そのまま真っ直ぐに自宅アパートに帰った。



どんなに泣き腫らしてブサイクな顔になっていようが、私には専門学校生としての務めがある。



一流パティシエになるという夢を叶えるためには、学校に行って勉学に励まなくてはならない。



昨日と同じ服を着て行くわけにはいかないので、ナオくんとケンカをしなかったとしても、一旦帰宅するつもりではいたけれど。



洗い上がりの私服に着替えて、軽くメイクもして、



「……まぁ、大体よし」



瞼の腫れはあまり誤魔化せなかったけれど、これは仕方ない。



諦めて出かけることにする。



バスに乗り、学校の最寄りの停留所で降りて、学校までの道のりをてくてくと歩いていると、



「結月〜!」



同じクラスの友人・平山ひらやま 梨乃りのが後ろから走ってきた。



「あ、梨乃ちゃん、おはよー」



私が振り返ると、



「おはよーって、目どうしたの!?」



梨乃ちゃんは私の顔を見るなり、驚きで目を見開いた。



「美人が台無し!」



美人と思われていたらしいことが嬉しくて、



「えへへ、ありがと〜」



へらっと笑ってみせると、



「いやいや、今のは褒めてないから!」



梨乃ちゃんは慌てて顔の前で手を振った。



とりあえず歩きながら、失恋したということだけを梨乃ちゃんに伝える。

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