第22話

「まさか、ゆづが俺のことをそんな風に思ってたなんて知らなかったから……ごめん。いっぱい傷付けた」



「……」



そんな風に謝らないで欲しい。



「もうこれ以上、ゆづの傷付いた顔は見たくないから……」



そんな風に言われたら……ナオくんを好きな気持ちが、ますます諦め切れなくなる。



「だからもう、俺には関わるな」



そして、そんなたったの一言が、また私の胸を深くえぐる。



「俺はゆづが思ってる程、いいヤツなんかじゃない」



「そ、んなこと……」



「俺みたいな最低な男じゃなくて、ちゃんとゆづだけを大切にしてくれるヤツと一緒になれ」



結局は、ナオくんにとっての大切な女の子は舞ちゃんだけなんだ。



そんなのとっくに分かっていたけれど、



「そんなこと、ナオくんにわざわざ言われたくない!」



私にとって誰が大切なのかを決めるのは、私なのに。



「……もういい!」



「おい……?」



私はナオくんの声を無視して、昨日まで着ていた自分の私服を乱暴に掴むと、また寝室に引っ込んだ。



そこで自分の私服に着替えて、脱いだスウェットは丁寧に畳んでベッドの上に置く。



寝室の扉を勢いよく開けて、リビングのソファーの横に置いていた自分の鞄をひっ掴むと、



「お世話になりました。どうもありがとう」



とりあえずお礼だけは告げて、ナオくんの部屋を飛び出した。



「ゆづ!?」



玄関近くまでナオくんの焦ったような声は聞こえたけど……



彼は結局、私を追いかけては来なかった。

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