第20話

「……ん……あれ……?」



私は、スマホで設定しておいたアラームが鳴るよりも先に自然と目が覚めた。



外はまだ薄暗く、カーテンの隙間から差す光もない。



けれど、部屋の扉からは隣の部屋の明かりが漏れていて、そのお陰で室内の様子が電気を点けなくてもなんとなく分かる。



……ここは、私が昨日寝たはずのリビングではなかった。



「……!?」



ふかふかで温かいベッドの上で、私は慌てて上半身を起こして飛び起きた。



ソファーで寝ていたはずなのに、なんで……!?



ベッドの隣を確認するも、ナオくんが一緒に寝ていた気配はない。



ベッドから下りて、リビングへと続く扉を慌てて開けた。



「あ、ゆづ。おはよ」



寝間着代わりのスウェットの上からエプロンを着けたナオくんが、キッチンから顔を覗かせた。



ダイニングテーブルの上には、焼き魚やだし巻き玉子が並んでいて、味噌汁のお出汁のいい香りまでする。



「お、おはよ……」



なんとなく気まずくて、目を見ないまま答えると、



「朝ごはんもうすぐ出来るから、先に顔洗っておいで」



私とは対照的に優しい声でそんなことを言ってくれた。



昨日、私に無理矢理キスをしてきた人と同じだとは思えない。



……もしかして。



昨日ナオくんにキスされたのは夢だったのでは?



妄想癖の激しい私の性格上、そっちの可能性の方が遥かに高い。



もしそうだとしたら……恥っず……!

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