第19話

夢かうつつか分からない曖昧あいまいな感覚の中で、体がふわふわと浮いているような錯覚を起こした。



体を動かそうとして、



「……ん……」



自分の体なのに、まるで全身が鉛のように重く、指先一つ動かせない。



この感覚は、たまに経験したことがある。



“自分は起きている”と思い込んでいる夢を見ているだけなんだ。



でも、夢だと自覚した時点でこれは明晰夢めいせきむというやつになるのだろうか?



そんなことを、相変わらず動かない体で考えていると……



ふわふわした感覚が、不意になくなった。



ソファーよりも柔らかくて気持ちのいい感触を、背中から踵にかけて感じる。



そして、



「ゆづ」



私の大好きな、ナオくんの優しい声。



聞き慣れた声のはずなのに、



「ごめんな、ゆづ」



耳に届くその声は、私が聞いたこともないような、甘くて切ない響きを持っていて。



どうしてナオくんがそんな声を出すんだろう、と不思議に思っていると、



――ちゅっ……



おでこに、温かくて柔らかいものが押し当てられる感覚がした。



(……なに、これ……?)



何が起こっているのかが分かる前に、はすぐにおでこから離れてしまった。



(何だったんだろう……変な夢、だ、な……)



考えたいのに、私の意識はまたそこで途絶えてしまった。

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