第14話

「……うん」



小さく頷くだけで精一杯だ。



「はぁぁー」



ナオくんがこれ以上ない程に大きな溜息をつき、私の体がびくっと震える。



「処女は面倒だから嫌、とか……?」



恐る恐る訊ねると、



「バカ」



ナオくんは私の髪を乱暴にぐしゃぐしゃと撫でた。



「初めては、ちゃんとゆづの大事な人としろ」



私の気持ちを何にも分かっていないナオくんの台詞に、



「……」



悲しいを通り越して何だか腹が立ってくる。



「ゆづが、周りが言うようなビッチな女じゃないってことは俺がちゃんと分かって――」



「当たり前じゃん! 私はずーっとナオくんだけが好きなんだから!」



告白するつもりなんて全くなかったのに、ナオくんのせいでぶちまけてしまった。



「……」



ぽかんとした顔でしばらく私の顔を眺めていたナオくんは、不意に私から目をそらすと、



「言い忘れてたけど、俺のセフレになれる条件……絶対に唇同士のキスはしないこと、だから」



今更ながらにそんなことを告げてきた。

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