第4話

「ナオくんっ……!」



彼――ナオくんの顔を見た瞬間に、ずっと我慢していた涙がぼろぼろと溢れてきた。



「ちょっ……ゆづ、こっち」



ナオくんは、左手に水とおしぼりの載ったお盆を持ったまま、右手で私の手を優しく引いた。



そのまま、テーブル席ではなく、厨房がすぐ近くに見えるカウンター席へと案内される。



「あれっ? ゆづちゃん、どうしたの?」



聞き慣れた声に、俯けていた顔を慌てて上げる。



そこには、美しいストレートロングの黒髪に大きな瞳が印象的な、綺麗と言うよりは可愛いと表現するのがぴったりな女性――松野まつの まいちゃんがカウンター席の一つに座っていた。



……私の大好きなナオくんが、子供の頃からずーっと片想いをしている相手。



私はこの2人とは幼なじみの関係で、今も仲がいいと思っている。



そして、その舞ちゃんの隣には、



「結月ちゃん、だっけ?」



ナオくんとはまた違うタイプのイケメンが座っていた。



確か名前は――



友季ともきさん……」



――松野 友季さん。



舞ちゃんの旦那さんで、ナオくんにとっての恋敵。



舞ちゃんと友季さんは、私が尊敬してやまない憧れのパティシエさんでもある。

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