第87話

誰に対しても温厚で優しく、クラスの癒し系キャラだと言われていた友季が、クラス内のイジメのターゲットに変わるのは、あまりにも簡単だった。



この日をきっかけに、友季の学校生活はただひたすらイジメに耐えるだけの毎日となった。



私物が盗まれる、壊されるは当たり前。



殴られる蹴られるも、日常茶飯事。



友季が毎日母に用意してもらっていた昼食用の弁当も、虫の死骸やゴミを入れられて食べられる状態ではなく。



折角作ってもらった弁当をただ毎日捨てているだけなのが申し訳なくて、いつからか弁当は断り、購買部のパンで済ませるようになっていた。



――と、ここまでを舞に話すと、



「うっ……ぐすっ、ひっく……」



「……舞。俺の二の腕が舞の鼻水でベタベタなんだけど」



舞の枕代わりにされていた友季の左腕が、何か大変なことになっていた。



「ごめ、なさ……でも、トモくんが……」



「今はもう大丈夫だから、もう鼻水は止めてくれ」



友季は苦笑しながら、ベッド脇の台に向かって右腕を伸ばす。



そこにあったティッシュを一枚抜き取り、



「はい、ちーん」



舞の鼻に当てた。



素直に友季の言う通りに鼻をかんだ舞は、



「私がその場にいたら、トモくんのこと守ったのに……!」



またぐすぐすと泣き出した。

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