第84話

赤く染まった舞の頬を、友季が優しく撫でる。



「まぁ、その……今日来てたあの客たちは、俺の高校の同級生なんだけど……」



友季は言葉を選びながら、気まずそうに話し出した。



「高一の時に、あのハンカチ差し出してきたヤツと仲良くなって、告白されて……」



「……」



舞は、黙ったまま頷くだけの相槌あいづちを打って先を促す。



「誰かを好きになったのも、告白されたのも初めてで、すげー浮かれててさ」



「……」



今日見たあの女性が友季の初恋の相手だと知って、舞の胸がズキリと痛んだ。



そんな舞の気持ちに気付いているのかいないのか、友季は舞の髪を指先で優しくく。



「結構暗い話になるけど、舞に変な誤解はされたくないから……聞いてくれる?」



真剣な瞳で見つめられてそんなことを言われたら、断れるわけがない。



「……トモくんが辛くないなら話して」



舞の言葉に、



「ありがとう」



友季は眉尻を下げた困り顔のような笑顔を見せた。

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