第82話

友季に腕枕をされた舞は、



「はぁ……舞、可愛い。好き」



「……」



ベッドの中でぎゅっと抱き締められたまま髪を優しく撫でられ、ひたすら可愛いだの好きだのをささやかれていた。



こんなことをされては、舞も素直にならざるを得なくなる。



「トモくん……」



意を決して友季を呼ぶと、



「うん?」



友季は何故か、待ってましたとでも言いたげな表情見せた。



そんな友季の表情に舞は怯みつつも、



「今日は私のこと守ってくれてありがと。その……凄く格好良かったよ」



真っ赤に染まった顔を隠したい衝動を必死に抑えて、そう告げた。



「……」



舞の言葉に、友季は目を大きく見開いたまま固まる。



「舞が俺を格好いいだなんて珍しいな……どうした?」



「えっ? 格好いいと思ってなかったら付き合わないよ?」



この男は、人の振り絞った勇気を何だと思っているのか。



舞はそう言いたいのを我慢して、



「トモくんが格好良すぎるから、いっつも不安になってるのに」



別の不満をぶちまけた。



「不安?」



本気で分かっていなさそうな友季に、舞は盛大に溜息をつきたくなる。



「……トモくんって、大人っぽい美人にモテまくりじゃん」



きっと大人な女性はこんな理不尽な不満を恋人にぶつけたりはしない。



それはよく分かっているのに、舞は友季を責めるのをやめられなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る