第74話
騒がしい客たちが帰ったところで、
「お騒がせしてしまい、申し訳ございません」
友季がカフェの利用客たちに向けて深々と頭を下げたので、舞も慌てて深くお辞儀をした。
カフェの責任者を任せている女性スタッフも出てきて、友季の隣で同じように頭を下げる。
そんな彼女に友季はこっそりと耳打ちして指示を出し、頷いた彼女は慌てて奥に引っ込んだ。
しばらくしてから他のカフェスタッフを数人引き連れて戻ってくる。
彼女たちの手にしているトレーには、今現在カフェを利用している客の人数と同じ数のデザートが載っていた。
友季がまだ試作をしている途中の洋梨のソルベ。
綺麗なドーム型に整えられたソルベの上に、ミントの葉が載せられている。
シンプルな見た目だからこそ、下手に飾り付ける必要がないくらいに美味なのだということが分かるデザートだ。
「お詫びになるか分かりませんが、もしよろしければお召し上がりください。まだ未発表の新作でございます」
友季のその声と笑顔に、カフェの利用客たちから黄色い悲鳴が上がる。
キャーキャーと騒がれている友季を隣で見ていた舞は、
(やっぱり、トモくんって凄く格好いいんだ……)
キュンとしつつも何故だか少しだけ痛みを伴う胸を、手でそっと押さえた。
そして、その苦しみを吐き出すかのように、
「はぁ……」
隣の友季にバレないように気を付けながら、小さく溜息をついた。
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