第69話

きっとこの感じだと、この店のオーナーが友季だと知っていてわざわざ会いに来たのだろうけれど。



今更、何をするつもりなのか。



いじめられていた当時を思い出しただけで、吐き気を催してくる。



「テレビで紹介されてるの見て、お前と同姓同名だからまさかとは思ったけど」



「イケメンパティシエで騒がれてるのが、本当にあの“デブ野”だったとはな」



興味深そうにジロジロと舐めるように見られて、



「……」



友季は俯いたまま黙り込む。



目の前の6人は一応は客なので、友季も下手な言い返しが出来ない。



どうしたものか、と友季が悩んでいると、



「やめなよ、3人とも。松野君、困ってるじゃない」



一緒にいた女性3人のうちの1人が、男性陣をたしなめた。



その凛とした美しい声に、友季は俯けていた顔を恐る恐る上げる。



ふんわりとした優しい面差しが印象的な、可愛らしい雰囲気の女性。



彼女の名は、永野ながの みやび



高校時代、学年一の美少女と呼ばれ――友季にとっては初めての恋人だった女性。



けれど、友季に対するいじめの根源となったのが、実はこの雅だったりする。



彼女こそが、友季の女性恐怖症を引き起こした張本人なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る