初恋相手
第68話
すっかり気温が下がってしまい、そろそろ雪がちらつくのではと思われるような、12月のある寒い日。
この日の『パティスリー・トモ』のカフェスペースには、30歳代くらいに見える男女6人のグループが事前に予約をした上で来店していた。
一時的にカフェの手伝いに行っていた舞が厨房に戻ってきて、
「シェフ……」
恐る恐る友季を呼んだ。
「お客様が、シェフにお会いしたいそうです」
ホールケーキにクリームを絞っていた友季の手が、ぴたりと止まる。
そのまま表情を険しくして、舞の方をちらりと見た。
「えっ? クレーム?」
「シェフのご友人を名乗られていて……」
「……」
友季には、わざわざ会いに来てくれるような友達など1人もいない。
何だか、嫌な予感がする。
「……分かった。行ってくるから、この続き、鈴原がやっといて」
「はい!」
最近になってやっとホールケーキの仕上げを任せてもらえるようになった舞は、嬉しそうに頷いた。
手にしていた絞り袋を舞に託し、友季はざわつく胸を抑えてカフェへと向かう。
2人用のテーブル3つをくっつけて並べて、カフェスペースの一角を陣取っている6人組に近付くと、
「うっわ、マジで松野!?」
「変わりすぎじゃね!?」
「整形したのか!?」
6人のうちの男3人が、友季を指差して笑った。
「……どうも」
友季は逃げ出したい気持ちを必死に抑え、何とか一言だけで挨拶をした。
この6人組の客は――高校時代、友季のことをいじめていた元クラスメイトたちだった。
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