第67話

「……もしもあの日に戻れたらこうしたかったなって、ずっと思ってた」



友季がぽつりと漏らしたその一言で、



「!」



のことを、友季がとても悔やんで悩んでいたことを、舞は今になって初めて知った。



「あの時の俺は……直人から舞を奪うことしか考えてなかったから」



そう言って、友季は舞の体をぎゅっと抱き締める。



「でも今の俺は、舞が一番大事だし……舞を誰かの代わりだとか、誰かを舞の代わりにするつもりは全くないから」



「トモくんが私を大事にしてくれてるのはもう十分知ってるよ」



舞が友季の背中に両手を回してきゅっと抱き締め返すと、



「誕生日の日に告白もなしにいきなりあんなことされて……嫌じゃなかった?」



友季が舞の目を恐る恐る覗き込んだ。



「嫌だと思ってたら、その次の日から付き合い始めたりしないよ」



舞は友季の目を真っ直ぐに見つめ返す。



「やっぱり舞のこと、彼女としても部下としても手放してやれないな」



愛おしそうに舞を見つめ、その頭を優しく撫でる。



「どっちの意味でも大事にするから、逃げ出せないこと、覚悟しといて」



「頼まれても逃げ出さないから、トモくんの方こそ覚悟しといて!」



ドヤ顔をしている舞の唇に、



――ちゅっ



友季が再びキスを落とすと、



「なっ……!?」



瞬時に真っ赤になる舞の顔。



「今のは、俺の勝ちだな」



意地悪くニヤリと笑う友季に、



「トモくんの意地悪!」



舞はむくれたが、その反応は友季を更に喜ばせるだけとなった。

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