第66話

「……もう1回、キスしていい?」



友季は思わずそう訊ねていた。



そのあまりに真剣な眼差しに、



「えっ……うん」



舞は戸惑いながらも頷く。



舞の返事をしっかりと聞いてから、友季は舞の左頬に右手でそっと触れた。



そのまま、その指先で舞の頬を優しく撫でる。



「舞……」



「?」



いつもならここですぐにキスをするのに、なかなかしようとはしない友季を、舞が不思議に思っていると、



「好きだ、舞」



「……!」



真剣な瞳に真っ直ぐに見つめられ、息が止まりそうになった。



ドキドキしすぎて、呼吸の仕方すらも分からなくなる。



友季の目を見つめたまま動けなくなった舞に、



「……」



友季がゆっくりと顔を近付ける。



あっ、と思った時には、



「……!」



互いの唇が優しく触れ合っていた。



しばらくしてから、とてもゆっくりとした動きで唇が離されて、



「……」



また真剣な眼差しで見つめられる。



友季とのキスなんて、もう数え切れない程交わしてきたのに、



「……っ」



今までされた中で、一番ドキドキした気がした。

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