第65話
舞のその反応を腕の中で感じ取った友季は、唇をそっと離して舞の顔を恐る恐る覗き込む。
「……なんで緊張してんの?」
「だってここ……職場だし」
そう答えた舞は、顔を真っ赤に染めて目を潤ませている。
「トモくんと初めてキスした場所でもあるし……あの時のこと思い出しちゃって」
それは、舞の21歳の誕生日を友季なりにお祝いした日でもあり――
――友季が勝手に直人に嫉妬して、舞の唇を無理矢理に奪った日でもある。
友季にとって、今までの人生で一番やり直したいと思っている日。
「……」
あの時の後悔が押し寄せてきて、友季は唇を噛み締めて黙り込んだ。
「トモくん……?」
舞が不思議そうに首を傾げて友季の顔を覗き込む。
「……」
悲しそうな友季の目を見て、
「あのね、トモくん……」
舞は、まだ友季には話したことがなかった本音を打ち明けようと決意した。
「私が大っ嫌いだったシェフのことを好きになったのって、あの日なんだよ」
「……え?」
友季は慌てて舞の顔を見る。
「トモくんが私のケーキに飾るプレートをくれて、おめでとうって言ってくれた時。あの瞬間に、トモくんのこと好きかもって気付いたの」
舞が、恥ずかしそうにはにかんだ。
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