第55話
友季が舞の入社日にあんな酷いことを言った理由が、今初めて理解出来た気がする。
山内のことで反省した友季なりに一生懸命に考えた対策法なのだと。
本当はこんなに優しいのに、感じの悪い態度を取っていれば、好かれることはないだろうという、不器用な方法。
「……トモくんのことを好きになった女の子が全員クビになったって噂もあるけど、あれは本当なの?」
その噂が気になって、舞自身も友季に対して嫌いなフリを続けていたから。
「誰かをクビにしたことは1回もない。付き合って欲しいって言われて断っただけで」
つまりは、友季に振られて働き辛くなったので本人の意志で辞めた、と。
「……山内に関しては、俺に全く興味なさそうに見えたから安心してたんだけど」
友季はふっと遠い目をした。
「仕事終わりに2人でメシ食いに行った時に……片想いで悩んでるって相談されて、その時に初めて山内の気持ちに気付いたんだ」
「……」
今なら彼女の気持ちが痛い程分かる舞は、思わず黙り込む。
「本当に器用で何でも出来るヤツだったから辞めて欲しくなくてな。ずっと気付かないフリをしつつ、でも突き放すこともしないでいたら――去年のクリスマスに、はっきり答えを求められて」
友季は、ふーっと深く長い溜息をついた。
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