第49話

「……心が辛い」



ぼそりと本音を漏らした舞に、



「えっ!?」



その予想外の言葉に、友季はあたふたと慌て始めた。



「どうした?」



腕の中の舞の顔を覗き込むと、その瞳はまたうるうると潤んでいて。



「トモくん、元カノさんたちの時もこうやって買い物に走ったりしてたの?」



「……え?」



一瞬、意味が分からずに固まった友季だったが、



「あぁ……」



すぐに舞の言わんとしていることを理解した。



「姉貴が結婚して家を出るまでは、よく俺が買いに行かされてたから」



ホルモンバランスの乱れでイライラしていた姉には、家に引きこもってばかりの友季が鬱陶うっとうしく見えたのだろう。



たまには外の空気を吸ってこいと言われ、鎮痛剤と種類のよく分からないナプキンを買いにパシらされた。



「種類とかも間違えるとめちゃくちゃ怒られたし。元からイライラしてるから、もうなんで怒られてるのかも全然分かんねぇし」



「……」



相手があの初華となると――分かる気がする。



「何か舞を不安にさせるようなことをしてたんなら、ごめんな」



友季はそう言うと、舞の頭を優しく撫でた。



「ううん。ありがとう」



友季の優しさを勝手に誤解していたことを、舞は恥ずかしく思う。

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