第46話

「舞は多分、客のためを思って取り置きしないでいるんだろうけど」



友季は、言いながら舞の頭をポンポンと撫でる。



「俺としては、俺のお菓子のファンでいてくれてる舞にも食べてもらいたいから」



「トモくん……」



うるうると潤み出す舞の瞳を見た友季は、



「あっ、ちょっとここではストップ!」



慌てて舞をなだめた。



「今、舞にそんな目で見つめられたら、店だろうと舞のこと襲うから」



そんな友季の台詞に、



「えっ!?」



舞の涙は無意識のうちに引っ込んだ。



「……早く帰るぞ」



そう言って舞の腰を抱き寄せる友季の顔は赤く染まっていて、



「……うん」



今夜は友季の熱を感じながら眠ることになるのだと予感させられて、舞は恥ずかしそうに小さく頷いた――





――のだが。



「トモくん、ごめん……」



風呂上がりの舞が、入れ違いでこれから風呂に入ろうとしていた友季に頭を下げた。



何か朝から少しダルい気がするなぁと思ってはいたのだが、入浴前に生理が来ていたことに気が付いた。



必死に謝る舞に、友季は、



「体調は? 必要なものがあるなら、今から買いに行ってくるけど」



本気で心配そうに訊ねてくれた。

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