第41話

「でも結局、何も買わずに手ぶらで戻って来たんだけど。どこに何しに行ってたのかしらね、うちのシェフは」



「……」



上田にじろりと睨まれ、友季はまた気まずそうに黙った。



「まぁ、元気ないよりはいいんですけれど」



そんなに元気がなかったのかと、舞は不思議に思ったが、上田がそう言うのなら間違いないのだろう。



「今日はグラニュー糖と薄力粉、間違えないで下さいね」



更に上田がそう付け加え、



「……え?」



舞は思わず首を傾げた。



「昨日のシェフ、本当に色々と抜けてて、グラニュー糖と間違えて薄力粉使ってたのよ。素人より酷いわよね」



「……」



友季は気まずそうにその場から静かに離れ、自分のやるべき仕事をこなす。



それを横目に見ながら、



「シェフを振り回すことが出来るのなんて、鈴原さんくらいよ」



上田は苦笑して見せた。



「お菓子作り以外では不器用な人だから、大目に見てあげてね」



舞には、友季が不器用だなんてとても信じられないことだけれど。



それでも、彼が舞をとても大切に想ってくれているのは、十分に伝わってきているから。



「はい。大丈夫です」



舞はふわりと笑いながら、しっかりと大きく頷いて見せた。

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