第35話

「トモくんなら大歓迎です」



真顔でそんなことを言う舞に、



「舞のこと大事にしたいって言ってる俺に、そういうこと簡単に言わないで」



友季も真顔で答えた。



「失礼な。簡単になんて言ってないもん! 物凄く勇気を振り絞って――」



「うるさい」



ギャーギャーとわめく舞の唇を、友季が自分の唇で優しく塞ぐ。



「……ん」



すぐに濃厚な口付けに変わり、舞は思わず自分に覆い被さってきている友季の首に腕を回す。



2人の吐息が漏れる音とキスの水音だけが室内に響き、



「……あっぶね。本当にもう一戦しそうになった」



随分と時間が経ってからハッと我に返った友季が、慌てて舞から体を離した。



「……いいのに」



舞はぼそりと言ったが、



「本当はまだ痛いんだろ? 無理するな」



友季に優しく抱き締められては、



「うん……」



素直に頷くしかない。



確かに、友季と繋がっていたところも、お腹の奥も何だかまだ痛い気がするし。



それに、少し出血も――



「あっ! シーツ汚しちゃったかも……」



慌てて体を起こそうとする舞を、



「いいから、ゆっくり寝てなって」



友季が抱き締めたまま離さなかったので、舞はまたベッドにぽすんと体を預けた。



舞の髪を撫でる友季の手があまりにも優しくて温かくて、



「……」



舞はいつの間にか、そのまま深い眠りにちてしまった。

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