第23話

――ランドセルの天使。



何だそれ? と困惑しながら、隣で姪っ子を膝に乗せている友季の顔をちらりと見る。



「……っ」



友季は恥ずかしそうに顔を両手で覆っていて、舞の視線には気付いているはずなのに、こちらを全く見ようともしない。



「……トモくん?」



舞が恐る恐る声をかけると、



「あの……ちょっと、何の話をしてるのか……」



友季は顔を隠したまま、もごもごと答えた。



「えーっ? 高2の時に言ってたじゃん! 学校帰りにランドセル背負った天使を助けたって!」



初華が、舞を指していた指先を、今度は友季の方へと向ける。



「高2にもなって何言ってんだコイツって思ったから、覚えてるよ!」



「……っ」



友季は膝の上の愛華をソファーの上にそっと下ろすと、



「……ちょっと、トイレ行ってくる」



逃げるという方法を選んだ。



「あっ! 待ちなさいよ、この卑怯者!」



初華は叫んだが、友季は本当にそそくさとトイレへと逃げ込んでしまった。



恋人の姉と姪っ子と共に取り残され、しかも何だか恥ずかしい話題まで振られてしまい、



「……」



舞も気まずそうに黙り込んだ。



「まさか、友季の彼女があのランドセルの天使だったとはねぇ」



初華はまだニヤニヤと笑っている。



……非常に気まずい。



「当時の友季を知ってても、付き合うの嫌じゃないんだ?」



そんな質問には、



「当時の友季さんが、私の初恋の相手でしたから」



舞は堂々と答えられるだけの自信がある。

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