第19話

「えっ? 待って。部屋に誰かいるの?」



「あー、うん。口で説明するより、実際に会ってもらった方が話が早いかなって」



友季が気まずそうに頭を搔きながらそう言った時、



「友季ー? 帰ったのー?」



昨日も聞いた、女性の声。



部屋の奥から足音が聞こえ、舞は恐る恐る顔を上げる。



そこには、深紅の口紅がよく似合う、妙齢に見える美女が立っていた。



きっと、そこにある白いパンプスの持ち主であろう美女はどう見ても――5歳児には見えない。



やはり、嘘をつかれていたのだ。



そう思った舞は、もう友季に別れを告げようと睨むように顔を上げて――



「その子が、友季の彼女?」



舞が動くより先に、美女がにっこりと笑いかけてきた。



「どーもー。友季の姉の初華ういかでーす」



フランクな感じで、舞に向かってひらひらと右手を振ってから、



「ていうか、友季の彼女若すぎない!?」



慌てて友季の胸ぐらを掴むこの美女が、



「……トモくんのお姉さん?」



何だか信じ難くて、舞は目をぱちぱちとしばたく。



「ちょっ、姉貴……首締まってる……」



そんな友季の声は小さすぎて、舞にも初華にも届きはしなかった。



と、そこへ、



「ママー! 私の友季をいじめないでー!」



リビングから続く廊下を、幼い女の子がとたとたと走ってきて、友季の足元にぎゅっと抱きついた。



それを目線で追った舞は、



「あ……」



白いパンプスのすぐ隣に、子供用の小さな靴が置かれているのを発見した。

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