浮気相手の正体

第17話

友季のマンションに向かって走る車の中で、



「……」



「……」



舞も友季も、無言のままだった。



友季に対して拒絶反応を見せながらも、こうして一緒に来てくれているのだから、まだ少しは希望が残っているのかもしれない。



そうであって欲しいと、ほとんど願望に近い考えではあったが、



「舞」



友季は勇気を振り絞って舞を呼んだ。



「……」



舞は答えなかったが、窓の外に向けられていた視線が友季に向いたのが、気配で分かる。



友季は真っ直ぐ前を向いたまま車の運転を続け、



「俺が好きなのは、舞だけだ」



本心を伝えた。



けれど、



「……トモくんって、好きでもない人とも普通にキス出来るんだ?」



舞の声は実に不快そうで。



「あれは……俺の意志ではなかった」



悲しそうな友季の言葉で、やはり他の女とキスをしていたのは事実なのだと知る。



……しかし、



「俺が5歳の女の子に寝込みを襲われたって言っても、舞は信じてくれるか?」



「……え? 5歳!?」



相手が5歳の幼子だというのは予想外で。

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