第16話

「ったく、こんなヤツのどこがいいんだよ」



相変わらず鋭く睨み付けてくる直人に、



「……」



友季は黙るしかなくて。



その様子があまりにももどかしくて、



「舞を迎えに来たんじゃねぇのかよ?」



直人は結局は助け舟を出していた。



「あっ……舞、おいで」



友季はハッとしたように慌てて舞へと手を差し出す。



「……」



舞はムスッとしたまま、とことこと玄関にやって来た。



見た目と履き心地が良くて愛用しているショートブーツを履き、



「……」



友季の手は取らずに、その横を素通りするようにして玄関を出た。



「……っ」



友季は、やり場をなくした手でぎゅっと拳を握り締め、悲しそうに俯いて唇を噛み締める。



「……」



「……」



無言のまま歩き出した2人の背中を見送った直人は、



「あれで2人とも大人だっていうんだから、信じらんねーよな」



やれやれと肩をすくめて、静かに玄関扉を閉めた。

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