第12話

一頻ひとしきり泣いた後で、お腹が空いた気がした舞は、



「……朝ごはん食べよ」



直人が作ってくれた朝食を食べに、自室を出た。



ご飯とおかずは電子レンジで温めて、鍋の中の味噌汁はコンロで火にかけた。



それらをローテーブルに並べ、



「いただきます」



味噌汁を一口すすった。



「はぁ……美味しい」



直人の優しさの詰まった朝食は、やはりとても美味しい。



食後のデザートにバナナまで食べたところで、



――ピンポーン……



インターホンが鳴らされた。



(こんな朝早くに誰だろう)



いぶかしく思いながらドアホンのモニターを確認すると、そこには昨夜、舞を追い返した彼が映っていて……



「……仕事は?」



スピーカー越しに、そんな声をかけてしまっていた。



『あっ、舞!?』



モニターに映る友季は、酷く慌てているように見える。



『ちゃんと話がしたくて……今夜、時間もらえないか聞きに来た』



「そんなの、メッセージとか電話で言ってくれればいいじゃん」



そんなに浮気相手と連絡を取っていた形跡が残るのが嫌なのか。



舞はそう思ったが、



『俺のスマホ、昨日壊されて……』



どうやら、昨夜は修羅場になっていたらしい。



その犠牲になるなんて、可哀想なスマホだ。

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