第11話

「何があったか知らないけど、自分のことは大事にしろよな」



直人はそう言うと、また布団を元に戻して、



「うわっ」



驚いている舞の悲鳴を聞きながら、



「じゃ。俺はもう行くから」



舞の部屋を出て行った。



直人の足音が遠ざかり、玄関の扉の開け閉めする音がして――



――ガチャリ。



しっかりと施錠までしていってくれたようで、鍵のかかった音が聞こえた。



「……起きなきゃ」



本当は一日布団の中で過ごすつもりだったが、直人のお陰で動く気になれた。



頭の上まで掛け直された布団をどけて、体を起こす。



チェストの上に置かれているスマホを取ろうとして――自然と視界に入ってきたキーホルダーを見て、舞の胸がまたズキンと痛んだ。



合鍵を渡された時、凄く凄く嬉しかったのに。



いつでも会いに来てと言うから、会いに行ったのに。



なのに、女の人を連れ込んで、部屋には入れられないとか、誰なのかとかの説明も何もなくて。



今だって、スマホを久しぶりに確認したけれど、友季からの連絡は何も入ってなくて。



友季にとって、舞は所詮その程度の存在だったのかと――



改めてそう実感すると、



「……うぅ……ふぇーん……」



また勝手に涙が溢れ出てきた。

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