第10話

「直人なら、私のこと絶対にこんな風に泣かせないのにって本気で思ってるよ」



布団の中からそんな声が聞こえて、



「……舞、ごめん」



直人は先に一言だけで謝ると、



「えいっ」



渾身の力を込めて、舞から布団を剥ぎ取った。



「なっ!?」



驚いて直人を睨む舞の目は赤く充血していて、瞼もぷっくりと腫れている。



一晩中泣いていたのだと分かるその顔に、直人はぎゅっと胸が締め付けられた。



「そんなに泣いてるのは、舞があのオッサンのこと物凄く好きだからだろ」



「……」



「俺といて泣かないのは、俺のことが好きじゃないからだ」



言っていて、悲しくなる。



直人はまだ、舞のことを本気で愛しているから。



「気持ちの整理がついてないのに、他の男の優しさでフラフラするのは舞らしくないぞ」



本当はそんなこと、全く思っていない。



弱っている所につけ込んで優しくして、それで舞がこちらに来てくれればラッキーだとすら思っている。



けれど、そんな直人の意思に反して、口は勝手に言葉を紡いでしまった。



直人が好きなのは多分、友季のことを真っ直ぐに想い続けている舞なのだ。



自分のすぐ傍にいる舞ではない。

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