第91話

ムッとしたままの友季は、



「じゃあ俺が仕上げやるから、木村さんがヘタ取りしてよ」



計量する手を止めて、木村の傍まで行った。



「え……」



途端に青ざめる木村。



「シェフのナッペ、めちゃくちゃ速すぎて追いつけないから嫌っす」



「最近の鈴原は俺の速さにもちゃんとついてきてるぞ」



舞がヘタ取りした苺を、友季が物凄い速さで消費していくので、舞に鋭く睨まれたことが何度もあるが。



「……」



黙り込む木村に、



「嫌なら手伝わないけど」



友季は追い打ちをかけた。



パワハラだとか言われそうだが、今の友季にはミルクプリンの仕込みが一番重要なのだ。



「……分かりました。お願いします」



木村は断腸の思いで友季に頭を下げた。



「ん」



それを見た友季は、目の前の予約伝票をちらりと見る。



この予約ケーキをさばくだけでも、社員たちの負担はぐっと減るはずだ。



サクッと終わらせて、舞のためのミルクプリンを作らなくては。



「ふぅ……」



友季は軽く息を吐いて呼吸を整えると――



「いざ」



気合いを入れて、ケーキの仕上げ作業に取り掛かった。

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