第90話
舞との通話を終えた後、厨房に戻った友季は――
「……松野シェフ。帰ってくるなり早々、何してるんすか?」
他の社員の邪魔にならないよう、隅の作業台でミルクプリンに使用する原材料の計量をしていた。
元々、今日の友季は新商品の開発をする予定だったので、通常業務に携わらなくても大丈夫なスケジュールを組んである。
だが、それは友季だけのスケジュールであって、店全体としてのスケジュールに、“舞の早退”は入っていなかった。
「鈴原さん抜けてめちゃくちゃ辛いんで、松野シェフもこっち手伝って下さいよ」
グチグチとぼやく木村の前には、今日受け渡し予定のホールケーキの予約伝票がずらりと並んでいて、
「シェフー」
泣きそうな目で友季を見つめてくる。
「苺が足りないんで、ヘタ取りくらいして下さいよー」
舞にヘタ取りしてもらう予定だった苺が、まだ箱に入ったまま手付かずで積まれていた。
「お前……鈴原はヘタ取りマシーンじゃないんだからな」
最近になってやっと、舞がいないと現場がきつくなると思える程、舞は仕事が出来るようになっていた。
そんな舞をヘタ取りマシーンみたいに言われるのは、友季からするといい気がしない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます