第88話

舞のアパートを出て、再び店の駐車場に戻ってきた友季は、スマホにメッセージが届いていたことに気付く。



先程届いたばかりらしいそのメッセージは、送り主が“鈴原 舞”と表示されていて、



「!」



車を降りようとドアノブに手をかけていた友季の動きを完全に止めた。



もう一度運転席のシートに深く座り直し、はやる気持ちを抑えてメッセージアプリを開く。



そこには、



『電話で少しお話がしたいです』



と書かれていて。



友季は運転席に座ったまま、慌てて返事を打つ。



『今電話していい?』



と送ると、



――♪♪♪♪♪♪――



すぐに舞から着信がきた。



「もしもし、鈴原?」



ドキドキしながら電話に出ると、



『あの……』



まだ元気のなさそうな舞の声に、友季の胸がぎゅっと締め付けられる。



「体調は大丈夫なのか?」



『薬が効いてきたみたいで、少しマシになりました』



そんな舞の声に、友季はホッと安堵の溜息をついた。



だが、すぐに先程の直人の険しい顔を思い出し、



「俺と電話なんかしてて、怒られないのか? その……一緒に住んでるに」



直人のことを“彼氏”と言おうか悩んだ友季だったが、もし舞がそれを否定しなかったらと考えると立ち直れなくなりそうだったので、えて“彼”と呼んだ。

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