第87話

「……10歳も年下の女の子を狙うなんて、いい歳して恥ずかしくないんですか?」



先程よりも棘のある直人の言い方に、友季は、



「……?」



もしかして、目の前の彼は舞の彼氏ではないのではないか?



という疑問にぶち当たった。



「鈴原さんとは、どういうご関係なんですか?」



友季は直人の質問には答えず、逆に質問し返していた。



一方的に攻撃をするつもりだった直人は、その質問に面食らったが、



「舞とは……一緒に住んでるし、キスだって普通に交わす仲ですけど」



舞を取られたくない一心で、嘘を交えて答えた。



「……!」



直人の言葉を素直に受け取った友季は、途端に傷付いた表情を浮かべて俯く。



友季の表情に気付いた直人は、ますます不機嫌そうに目を吊り上げた。



「やっぱり、舞のことが好きなんだな」



「……」



否定出来ずに、友季は黙ってしまう。



「舞の上司だか何だか知らないけど、俺と舞の仲を邪魔しないでくれ」



友季を完全に敵と見なした直人は、もう敬語で話すことをやめにした。



「これ以上舞に何かしたら、パワハラとセクハラで訴えてやるからな」



「……」



受けたショックが大きすぎた友季は、もう何も言葉が出てこなくて。



「……気を付けます」



何とか紡ぎ出せた言葉が、それだった。

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