第86話

直人の案内で舞の部屋に通された友季は、舞をベッドにそっと寝かせた。



見るからに若そうな彼氏を見て心配になった友季は、



「何かお腹に優しそうなものとか買ってきましょうか?」



舞の食事の調達を申し出たのだが、



「俺、調理師のタマゴなんで、何でも作れるから大丈夫です」



直人に切って捨てられた。



舞の部屋の扉をそっと閉めて、



「じゃあ、俺はこれで……」



直人に睨まれっぱなしでは居心地が悪いので、友季はすぐに立ち去ろうとした。



が、



「……もしかして、アンタも舞のこと狙ってます?」



直人のそんな一言が、友季の足を止めさせる。



「……鈴原さんは、俺の大事な部下です」



それは、嘘ではない。



「ただの部下なら、背中に負ぶったりなんて、普通はしないと思うけど」



直人の棘のある言い方に、



「あの……不快にさせてしまったのなら、申し訳ありませんでした」



友季は深々と頭を下げた。



「……失礼ですけど、おいくつなんですか?」



20代半ばくらいに見えるが、友季があまりにも大人な対応をするので、直人は思わずそう訊ねていた。



友季が自分の年齢を正直に伝え、



(30歳!? オッサンじゃねぇか!)



直人は目の前の友季の顔を凝視した。

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