第85話

舞の歓迎会の時、舞に彼氏はいないと言っていたが、



(ずっといないって保証はないもんな……)



そんな当たり前のことに、



――ズキンッ……



友季の胸が痛んだ。



「アンタ、もしかして……舞の職場のオーナー……?」



そう訊ねた直人の表情が、ますます険しくなった。



直人に明らかな敵意を向けられて、



「……そうです」



友季は、舞が彼氏から変な誤解を受けないかと不安になった。



やはり、彼氏の前でこの体勢は良くないと思うから。



「舞。こっちおいで」



直人が舞に優しく呼びかけて手を伸ばす。



「……!」



意識が朦朧もうろうとしていた舞は、それでも直人に触れられるのを拒絶して、



「えっ、鈴原!?」



友季の背にぎゅっと強くしがみついた。



「……っ」



友季の真正面で傷付いた表情を浮かべる直人と、



「……はぁ……はぁ……」



友季の背中で苦しそうな呼吸をしている舞でサンドイッチされた友季は、



(もしかして、この2人……喧嘩中?)



困惑した表情を浮かべたまま、固まった。



「……とりあえず、そのまま上がってもらえますか?」



不機嫌そうな顔をした直人に、



「あ、はい」



友季は従う他なかった。

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