第83話

舞の暮らすアパートの駐車場に車を停めた友季は、



「……」



後部座席で友季の上着を布団代わりに被って眠っている舞を、困った顔で見つめていた。



この前は自分で起きてくれたけれど、今日は多分無理そうだ。



舞の部屋は2階にあるのだが、いくら腕力に自信のある友季でも、舞をお姫様抱っこしてあの階段を登りきれる自信はない。



「おんぶって、セクハラになるかな……」



お姫様抱っこをするよりも更に体が密着してしまうので、極力避けたかったのだが。



舞が小学生だった頃は、何の躊躇ためらいもなく背中に負ぶえたが、今はそういうわけにもいかない。



「鈴原……」



本人に許可を取りたいが、



「……っ」



舞は真っ赤な顔のまま、苦しそうな呼吸を繰り返すだけで、反応がない。



「そういえば……」



舞は確か、ルームシェアをしていると言っていた。



きっとそのシェアの相手も女の子だろうから、どの道舞を運ぶことはお願い出来ない。



「……俺がやるしかないか」



友季は、腹を決めた。



「鈴原、ごめん」



舞に謝罪しながら、友季は舞の体をそっと背中に背負う。



「……ん……」



少しだけ意識が戻った舞が、友季にぎゅっとしがみついた。



「……!」



途端に友季の顔が、熱のある舞に負けないくらいに真っ赤に染まる。

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